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旦那様が入院されて介護なしに一人で生活できなくなった奥様が入居された事例2025.07.08

2025年3月に利用された84歳の女性の利用事例をご紹介いたします。

①依頼の経緯

依頼は突然のことでした。

知り合いのケアマネージャーから当社の事を聞き、電話してきたようです。

「急で申し訳ありませんが、今日から利用したい」

ご主人が入院して、奥様一人では生活できなくなってしまい、近くの施設がどこも受け入れてもらえず困っているとのことでした。

彼女も3か月間入院をしていて、帰って来てからも動くことができず、床に横たわって起きれないし、食べることも飲むこともできない状態。と

ただ、飲み物は一応ccレモンなら飲めると仰っていたので最低限元気はありそうと思い、とりあえず車椅子を持って迎えに行くことにしました。

彼女との出会い

ケアマネジャーと連絡を取り合い、16時に自宅近くで待ち合わせて訪問しました。

すると家の中は洋服、洗い物、掃除すべてが行き届いていないような大変な状態で、歩く隙間も座れるところもない中で、奥の台所に彼女が座っているのを発見しました。

「こんにちは」と彼女の方から言葉が聞けたので、まずは一安心です。

ただ、部屋内は尿臭が漂っており、洗濯もせず、とりあえず乾いた服を着ていたような状態だったので、シェアハウス一健に一緒に行かなければいけないと思い、手に取れる服や薬を持って、車椅子に移乗させ、彼女を連れ出しました。

車内ではしっかり会話ができて、ハウスが近くなってくると「このあたりで牛乳を配達していた」という昔の話をしてたので、元々は活発な方だったのかなと思いました。それと同時に、新しい環境に移る前の不安の気持ちを落ち着かせようと、懸命に自分から話しているようにも見えました。

入居初日の様子

食事がとれないと聞いていたので、その日の夕食は食べられそうなやわらかい物を提供するようにしました。

食事前に服を着替えてもらい、来ていた服は洗濯しました。

他の利用者とも気さくにしゃべりながら、遂には完食してくださったので良かったです。

翌日の朝食では、味噌汁を提供しましたが、こちらも気に入っていただけたようで、おかわりまでされていました(笑)

食べること自体は好きだったようで、顔は丸く、人懐こく、体格のいい人だなというと印象でしたが、よくよく顔を見ると鼻が「j」のように先が左を向いているのに気が付きました。

鼻周りの腫れの症状

どうやら顔が全体的に腫れているようで、頬と鼻の高さが一緒になっていました。

常に本人の手が鼻の先を触っており、鼻詰まりと臭いを伴っていて、膿んで晴れていたようでした。

その日は訪問医の診察日だったので相談すると、一度専門家に行くようにということだったので、耳鼻咽喉科に行くことにしました。

病院へ行くと虫刺されといわれましたが、どうもそのような症状には見えません。

症状として、腫れと晴れた部分の周りの皮膚が少し硬くなっていたので、テルミーによる治療が効果的なのではないかと思い、試してみました。

テルミーによる治療

テルミーは日本発祥の温熱刺激療法です。棒状の管に、漢方薬の線を線香のように束ねて挿入して発火することで、患部に熱を与えつつリラックス効果を与えます。

初日は多めにかけたことで、皮膚の硬直は少し緩和されたものの、見た目に変化は見られなかったため、それから毎日の日課にするようにしました。

頭と額からかけ鼻と頬の順にテルミーをかけてマッサージすると、口の中に苦い物が出てくると言います。おそらく膿の影響ではないかと思いました。

毎日テルミーを当て続けると、徐々に鼻の周りが軟らかくなってきて、曲がりが無くなり鼻の高さが見られるようになってきました。

2週間ほど継続的に行ったタイミングで、顔の腫れもだいぶ引いてきて、顔がすっきりとし、膿のようなものは出なくなってきて、鼻の具合はとても良いといいます。

テルミーは今も続けており、癖になってしまっていた手が鼻に行くこともなくなりました。

悲しい知らせとこれからについて

シェアハウスの生活にもだんだんと慣れてきた頃のことです。
シェアハウス一健に1本の連絡が入りました。

それはご主人が亡くなられたという知らせでした。

ご主人は、入院しているとばかり思っていましたので、みんなとても驚きました。

奥様は、ご主人と一緒に家に帰る日を楽しみにリハビリをがんばっていらっしゃいました。
車いすから立ち上がる練習を続けて、よちよち歩きですが、ようやくご自分の足で動けるようになってきていたところでした。

その知らせを、どうしても本人には言い出せずに困っていましたが、社会福祉協議会の担当の方が、そっとお伝えてしてくれることになりました。

それからしばらくの間は、ずっと泣いておられました。
でも、少しづつ落ち着いて周りの人と話せるようになっていかれました。

葬儀はそれから1ヶ月ほど経ってから行われました。
その日は、スタッフが喪服を用意して、式場へいきました。

お部屋に案内され、ご主人とお会いになったときのことです。
「お父さんじゃない」と泣かれて、何度も何度もお顔を覗き込んで、確かめておられました。

その会場には、ほかに誰もおらず、お経の声も聞こえませんでした。
ただ時間だけがゆっくりと過ぎていき、とても寂しい気持ちになりました。

せめて、ここにいる皆で、心の中でお祈りをしようと思いました。
そうして、皆で静かに手を合わせました。

すると、彼女が突然、大きな声で「明るくなった」とおっしゃったのです。
驚いて顔を覗くと、やさしい表情に変わっていました。

「お父さん、天国へ行ったね」
そう言いながら、私たちと目を合わせてくださいました。

それから、皆で施設へ帰りました。

今後のことは、社会福祉協議会の方が手続きをしてくださることになりました。

まずご本人に、「これからどうしたいですか」と伺うと、
「ここにいたい」とおっしゃいました。

「私たちのこと、嫌いじゃなかったんだ」
そう思うと、とても温かい気持ちになりました。

これからも、ずっとそばにいて、最期まで一緒に過ごしていきたいと思っています。